ビールコンシェルジュが考えるクラフトビールとは。
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今日は意外と知られていない、「クラフトビール」の定義について。
「クラフトビール」とは
「クラフト」と「ビール」という言葉からから成り立っていますね。
クラフトとは、手工芸品、工芸品の総称。なので
直訳すると工芸ビールということになりますね。
言葉からは、手作り感があるビールといった事が読み取れます。
それぞれのブルワリーが小さなスケールで商品を生み出してきて、手作りのでビールを造ってきたことが言葉から分かります。
しかし、ほとんどのクラフトビールは小規模で生産されているのですが、そのボリュームはバラバラです。地方のブリューパブで作られる量が約160 klに対して、ヤッホーブリューイングでは年間3000 klの製造量を誇ります。
クラフトビールの一般的な定義
よく、クラフトビールの定義について議論されますが、実は日本ではまだ定義づけられてないんです。
なら、クラフトビールはどこで定義がされているの?と聞かれたら、それはアメリカですね。
アメリカのブルワーズ・アソシエーションが、クラフトビールは
「小規模である事こと」
「伝統的なビール造りをしていること」
「独立していること」
と定義づけています。
この定義の説明は以下のリンクから飛んだページが分かりやすく書かれています。
クラフトビールの定義。クラフトビールとは? | 日本ビアジャーナリスト協会
でも、この定義の一つ「小規模であること」というのは日本の小さなブルワリーの規模と比べたら約230倍も大きいんです!小さいとか、手作り、とかその辺の感覚が全く違うんですね。
なのでこの定義を日本で当てはめるのは、日本人の感覚からすると少々横暴なんじゃないかなと思います。
クラフトビールと地ビールの違いは?
クラフトビールのブームが到来すると、地ビールというブームの過ぎた言葉の代わりになって、何でもかんでもクラフトビールって呼ばれるようになりましたね。
地ビールといえば、2000年前後によく聞かれたワードです。でも今ではあんまり聞きませんよね。若い人だったら単語自体知らないこともしばしば。
一体、いつからクラフトビールという言葉が出てきて、地ビールの代わりに使われるようになったのか。
また、「地ビール=クラフトビール」という意見もありますが、本当にそうなのでしょうか。
クラフトビールと地ビールの違いを理解するのであれば、少しだけ遡って1994年からのクラフトビールの歴史を見ると分かりやすいですね。
地ビールブーム ~地方のおみやげビール~
1994年に酒税法改正が行われ、年に2000キロリットル以上の生産設備から年間60リットル以上に規制緩和されました。これがきっかけで小規模なビール会社の経営が可能になり、小規模ブルワリーが日本の各地にできてきました。これが「地ビール」ブームの発端です。
最初、「地ビール」は生産した土地のお土産物として認知されていました。観光地のお土産売り場に瓶に詰められたビールが並べられ、かなり地味なラベルが張られて売られていました。また、小規模なのでビールの単価は大手のビールよりはるかに高いものでした。
お土産だったら、高い値段でも買ってくれますもんね。
地ビール会社の中には、ブルワーを本場のドイツやアメリカ派遣してールの作り方を学び、持ち帰って品質の良いビール生産を行ってきたところもあります。また、海外からブルワーを呼び、醸造技術を学んだ会社もありました。
しかし、ほとんどの地ビール会社はお土産として生産していたので、万人にうけるであろうビールを生産し続けていました。そのため、地ビールの個性が欠落してしまったんです。
そのため、地ビールブームが過ぎると、多くの地ビール会社の経営は悪循環に陥り、品質の悪いビール会社は淘汰されていきました。
クラフトビールブーム
~個性のある上質なビール~
今から約5年前の2012年頃になると、今度はアメリカから上質なクラフトビールが日本に輸入されてきて、海外ビールのブームがおこります。このとき、「クラフトビール」という言葉も一緒に入ってきました。
(この頃、森ケイタはヤッホーブリューイングのよなよなエール、ベルギービールのデュベルを飲み、クラフトビールの世界に引き込まれました。)
日本国内に目を向けると、地ビールブーム後に生き残った小規模ブルワリーは、それぞれの個性を出した上質なビールを造るところが多かったため、この頃には消費者に再認識され、クラフトビールと呼ばれて親しまれるようになり、現在に至ります。
クラフトビールと地ビールの違い
クラフトビールという言葉が日本に入ってきた頃には、日本でも醸造家自身が飲みたいビールを造ろうという考え方が主流になってきたので、ビールはどんどん個性があるものになってきました。
つまり
クラフトビールには
「造り手の独創性」があるです。
また現在、地ビールはお土産物という意味合いが薄まり、
「地元に根付いた地元民に愛されるビール」と認識されるようになってきました。
僕の行きつけのビアバーには、壁一面に色んなブルワリーの醸造家がサインが書かれているのですが、その中に御殿場高原ビールの鮎沢さんが
「地元に溶け込み地元に必要とされること」と書かれていました。
クラフトビールと名乗るか、地ビールと名乗るか
これはビール会社次第なんだなと改めて思いました。
クラフトビールはすでに終わっている!
最近あっちこっちでクラフトビールという言葉を見受けられますね。
クラフトビールを売りにしたお店も多くなってきましたね。この前仕事で東京に行った際も、ネットで調べたら沢山出てきましたよ。昼からビール飲めて超楽しかった。
ほんとにどこでも手に入り安くなりましたね。コンビニとか近くの大型スーパーに行くとすぐ見つかります。
始めに言っちゃうと僕は、
クラフトビールは無くなって
ビールと呼ばれるようになると考えています。
歴史的に見ると、今現在クラフトビールと呼ばれているビールのジャンルは
20世紀にピルスナーが大流行するまでイギリスやベルギーを中心に飲まれていました。
このときは、クラフトビールだなんて呼ばれてなかったんですね。ビールというジャンルのエールだったり、スタウトだったり。
しかし世界大戦後にアメリカで大規模になった企業がこぞって「ピルスナー」を作ったことから、世界中で ビール=ピルスナー という考え方が定着しました。
この固定観念は現在にまで受け継がれていますね。日本でも大手企業が作っているビールのほとんどがピルスナーですから。
しかし、最近では大手企業もこぞって、エールタイプのビールを造っています。まだまだ、ピルスナー市場と比べると小さすぎますが、日本ではそのうち、クラフトビールという概念が無くなって来るんじゃないかと思います。
そうするとクラフトビールは無くなってきて、ビールには多様性が生まれますね。
僕はもうすでにクラフトビールと呼ばず、全てビールって呼んでますが、こんなに多種多様なお酒は世界のどこを探しても他に見られないです。
ビールに対する僕の愛はこちらの記事に詰め込みました。
これから、ビールは個性を表現するツールになっていくと考えています。
大規模には難しいと思うのですが、個人規模で作っているビール会社が世界中に沢山出てきて、作り手の感情の宿ったビールが沢山生まれる。
例えばラップのように、日常生活や社会への不平不満を表現するようなビールがあっていいと思いませんか?
ダンスのように誰も真似できないような表現がビールでできたら超面白くないですか?それを飲んだ人は感動し、作り手の世界観に酔いしれる。
作り手はそれに快感を感じて、また新しい味を探求する。アートのように、スポーツのように、映画のように、造り手自身を表現するツールになってい行きます。
今でもちらほら、腹の底から感動が押し寄せるような気持になるビールもたくさんありますよ。そのたび造り手の意図を感じ取る事に集中してしまいます。
ビールにはそうなる要素が十分にある。
今回は熱く語りすぎてしまいましたが、
皆さんにもビールを楽しんでいただきたいと思って書きました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
これからも「ビア会」をよろしくお願いします!